KADOYA MAGAZINE Vol.08「職人」リフレザーの職人が教える革ジャンメンテナンス−01 〜汚れ落とし編〜
「職人」リフレザーの職人が教える革ジャンメンテナンス−01
〜汚れ落とし編〜
バイクに乗り始めたきっかけとして、こいつに憧れたから、なんて人もいるくらい、 バイクとは切っても切れない関係にあるもの。
それが革ジャン、レザージャケットのたぐいだ。 ライダーの正装とも言えるこいつと添い遂げたい。
その術を知るべく、リフレザーの門を叩いた。
編集協力(Moto NAVI)写真(三浦 孝明)
革ジャンの手入れは「過ぎたるは及ばざるがごとし」である!
「目に入れても痛くないほど愛してるマイ革ジャン。かわいい子には旅をさせよとはよく言ったもので、実は手をかけすぎていませんか? 」
実は手をかけすぎていませんか? と、敢えて問うてみたい。
そう思ったきっかけは、「リフレザー」の工場を訪れたことだった。
誤解なきよう書いておくが、決してカドヤが革を雑に扱っているわけではない。
ただ、深く革を愛すばかりに私たちは必要以上にオイルを塗りたくり、クローゼットの奥にしまいこんでいないか、ということだ。
「革ジャンにオイルを塗るのは、1シーズンに1回で十分です。着用頻度にもよりますが、週末ごとにオイルを塗るなんていうのは明らかにやりすぎです。」
-そう答えてくれたのはリフレザーの職人高口氏-
現場で印象的に残ったのは、手をかけすぎず、でも丁寧に革と対峙しているという事実だ。
「とにかくオイルなり防水スプレーなり、何かを塗るときには必ずポケットの中などでテストする」ということをたびたび強調。
何があるかわからないから目立たないところで試す。それが結果的に革を不慮の事故から守ることにつながるという事が感じられた。
「リフレザー」の職人は、必ず、オイルを塗る前に自らの手の甲に一度薄く塗り伸ばす。
こうしてオイルの塗り過ぎを防いでいるのだ。 大好きな革ジャン、大切な革ジャン、思い出の革ジャン、そんな一着を愛でるのに焦りは禁物だ。
細かい部分までしっかり目をかけ、時間をかけ、手間をかける。そうすることで、それこそ一生モノの一着へと育っていく。
「そう、自分の体型さえ変わらなければ、ね。」
では、革ジャンメンテナンスへ!!!
まずはメンテナンス用の馬毛などのブラシを使って、大まかにホコリを払うところから始めよう。
チリやホコリはもちろん、排気ガスが原因の汚れなど、目で見るよりも案外溜まっているものだ。
ブラシなんて持ってない? でも大丈夫! それなら代わりに乾いた柔らかい布を使えば問題なし!
パッドやシャーリングが施されたジャケットは細部まで念入りに。汚れが酷い場合、硬く絞った濡れタオルで対応すると良い。
いざオイルを! といきたいところだが、その衝動をぐっとこらえてまずはポケットの内側などの目立たない場所にオイルを塗ってみる。
変色などの異変がないか確認してから身ごろなどに塗っていくと安心。
先に述べたように、一度手の甲にオイルをまとったスポンジをバウンドさせながら、ジャ ケットに薄く薄くオイルを塗布していく。
めんどくさがらずちょっとずつ塗るとムラになりにくい。
オイル塗り忘れポイント、栄光の第1位はこちら(カドヤ調べ)。この袖口のマチ部分はついつい見落としがちなので、ご注意あれ。
半袖で着ると、地肌に触れて汗などの汚れが付きやすい場所でもある。
汗といえば、忘れてはならないのが首の後ろ、エリの部分。エリ付きシャツなら肌とカラーが触れることはないが、Tシャツなどだと汗や皮脂がついて革がひび割れる原因となる。ここだけはまめに拭こう。
裏地は中性洗剤を水で薄めたものをウエスに含ませ、固く絞って拭く。
ファブリーズなど の消臭スプレーをぶっかけたくなる日もあるが、表地に浸透してシミになった事例もある ので気をつけよう。
ファスナーの動きが悪いときはシリコンスプレーを使うとよい。ただし、ファスナーに直接噴射はダメ。
一度ウエスに吹きかけたのち、革部分に付かないよう注意しながらファスナーの歯に塗っていこう。
高口氏は言った。「今日やったことを全部やっていれば、よっぽどじゃない限り革ジャンにトラブルなんて起きません」。
こんなに頼もしいフレーズがいままでにあっただろうか。 放任主義だけど、要所要所でちゃんと見守る。そんな男になりたい。そう思った。
-補色と保管編に続く。