KADOYA MAGAZINE Vol.09「職人」リフレザーの職人が教える革ジャンメンテナンス-02〜補色と保管編〜
「職人」リフレザーの職人が教える革ジャンメンテナンス-02
〜補色と保管編〜
前回は、〜汚れ落とし編〜を紹介した。今回は、補色と保管について紹介していこうと思う。
引き続き、リフレザーの高口氏問うてみた。
私:「革ジャンといえば、経年変化を楽しみ自分だけの一着に育て上げるものですが、中にはどうしても経年変化での色あせや、革の剥げが許せないライダーもいるはず。」
編集協力(Moto NAVI)写真(三浦 孝明)
(かく言う私がそうだ。)
高口氏:「確かに、そういった方もいらっしゃいますね。正直申しますと色褪せに関してリカラーなどの対策はありますが、革表面に顔料とトップコート処理が施されるので、革質によっては質感が変化することも挙げられます。
ですので、我々としてもリカラーに関しては念入りな打ち合わせといくつかの注意点があることをご説明の上で行います。」
高口氏は、私の目を真っ直ぐ見て背ける事なくこう伝えた。
(革のプロとしてなんでもやるのではなく、断る事もプロとしての仕事。そこには積み重ねてきたプライドと説得力が同居した。)
革の剥げはどうなのだろうか。
経年変化を味として楽しむか、劣化として 捉えるかは人それぞれ。擦れて色が落ちた 部分を劣化とみなし、補色することも可能だ。
写真上は表面が擦れてグレーっぽい 地の色が見えるが、補色後の右の写真は 真っ黒ぐろ。お好みはどちら?
ワックスの塗り方
ジャケットの色に合わせて、染料入りのオイルを用意し、スポンジの先にわずかにつける。
そして普通のオイル同様、一度手の甲で塗布量を調整しながら、問題の箇所に薄く薄く塗り伸ばしていく。 ここがポイント!手の甲で調整する事で、体温でワックスが溶け革に馴染みやすくなるぞ!
最後に丁寧に塗りすぎないように、剥げた箇所が隠れるように塗っていく。
場合によっては補色が原因でせっかくのエイジングの見栄えが悪くなってしまうので、自分の好みやこの先のウェアの着こなし方などと相談して挑戦したい。
メンテナンスアイテム
革ジャンメンテナンスをはじめる前に絶対必要なのが、メンテナンスアイテムだ。
しかし、「実際何が良いの?」と疑問に思うユーザーも多いだろう。そこで高口氏がいつも使っているメンテナンスアイテムを紹介する。
1.オイルを塗り広げるスポンジ。指だとムラが出やすいのでやはりスポンジや布を使うとよい。
2.革本来の雰囲気を持つヌメ革はナチュラルな風合いが美しいが、キズがつきやすく、シミになりやすいうえ、手入れも難しい。そんなヌメ革用のオイルはコロンブス製。
3.天気予報を思わせる名前の防水スプレー、コロンブスのアメダス。
4.潤滑、防錆剤として使われる東洋化学商会のシリコンスプレー。直接噴射はだめ。
5.こちらもコロンブスの大定番の保革クリーム。
6.擦れて色が抜けた場合の補色にも使えるコロンブスの染料入りメンテナンスオイル。
⚠︎「本来リフレザーでおこなっているリカラーでは使用しないが、セルフメンテナンスの範疇であれば染料入りオイルも使い易くておすすめ。」
7.それぞれ毛の固さが異なるブラシ。スエードやヌバック用のものは柔らかい金属(真鍮)の毛を採用している。
ここまで揃えた方が良いわけではないではないが、この中から自分の革ジャンに合っている物を探していくのが重要だ。
保管方法
保管する時も勿論POINTが存在する。終わったと思った時こそ気をつけよう。!
一通り手入れが済んだジャケットは、風通しがいい日陰で保管。その際には厚みのあるハンガーをセレクトし、肩や上腕に変な形が付かないように、ジャケットの肩幅に合わせたハンガーを使うこと。
こうすれば次も気持ちよく着られるだろう。
クリーニングに出した衣類に被せられてきたり、CD-ROMを入れる簡易的な袋としてときどき見かける不織布とは、その名の通り繊維を折らずに絡み合わせ、シート状にしたもの。
空気を遮断することなく、空気中のホコリやカビの菌などから革ジャンを守る。
メンテナンスが済んだものは、不織布をかけて直射日光の当たらない風通しがよい場所で保管したい。湿気がこもりやすいビニール袋はNG。
ビニール袋がNGな理由
①革の表面にビニール袋の成分が反応してくっつく可能性がある。
②湿気がこもりやすくなるのでカビが生える可能性が高くなる。
以上の工程が、革ジャンを長持ちさせる方法のノウハウ「リフレザーの職人が教える革ジャンメンテナンス」だ。
最後に、高口氏に質問してみた。
私:「こんなにノウハウを公開しても良いんですか?皆さんがメンテナンスを覚えれば、クリーニングに来なくなるんじゃないんですか?」
最後に高口氏は、こう言い放った。
その言葉には、損得関係なく、ただ革ジャンと向き合う一人の職人の姿が存在した。
「彼の言葉を聞いて、企画の私は見習おうと思った。」
---次回は、「洗濯の選択。」