small talk - Vol.01 専門クリーニング工場の作業場
small talk - Vol.01 専門クリーニング工場の作業場
普段から馴染みのあるクリーニングというサービス業、それにも関わらず、その裏側はあまり知られていないのではないだろうか。この記事では通常は目にすることのない革専門クリーニング工場の裏側、作業場の雰囲気をお伝えしたい。
写真・文/菊地謙三郎
静かな機械音が聞こえてくるクリーニング工場の雰囲気
「REFLEATHER(リフレザー)」工場の出発点は16年前の2006年。
それ以前のカドヤには課題があった。それは創業当初より行ってきたサイズ直しや修理など、皮革製品のアフターケアの充実を進めて最後に残ったもの。
革製品を扱っている企業への問合せに、革製品のクリーニングについての質問がいかに多かったかは容易に想像がつく、ましてやオーダーメイドなども作製しているのだから尚更だ。
革専門クリーニング工場「REFLEATHER(リフレザー)」はそうした顧客の声と真摯に向き合った結果から生まれたと言えるのではないだろうか。
革靴発祥の地として革の歴史も深い街、東京浅草にある革専門のクリーニング工場、その入口には直接の持ち込みに対応する為、小さめのカウンターが設けられている。そのカウンターの前に立つと、奥にある作業場からクリーニング工場らしい控え目な機械音が聞こえてくる。
受付時に検品が行われた後、工場で行われる作業前検品。洗いの内容とその前後の処置を含めた全体の計画を決定する。クリーニングといえば洗っている画像が印象的だが、実際はこういった判断を必要とする業務にこそ、経験と知識が必要になる。
普段は特殊な薬液を混ぜた水が満たされているシンク。区分けされたシンクは段階的に水洗いをする場合や様々な状況の依頼品への対応に使用されている。依頼品を漬け込む前には作業台にて特殊な処理や部分的な洗いなど、一点ごとに異なる処置を行うことも多い。
道具と呼べるものから機械と呼べるもの、またはその中間のものなどが工場内にあり、どれも使い込まれた風合いを滲ませて可動している。工場あるいは工場見学という言葉に私たちが惹きつけられるのは、その風合いが生み出す空気感のせいなのかも知れない。
工場の魅力は簡明素朴と言える飾りけのない中の機能美、ともするとそれは革製品やモーターサイクルの美しさと同質のものなのではないだろうか。などと妄想しているが、これは思いのほか間違ってはいないのではないだろうか。
建物の中二階の個室では大きな業務用マスクを装着した職人が補色の依頼を受けた際に行う色付け前の下地作業を行っていた。しんとした部屋の中は、作業場が主役で職人が背景のようだった為、それをそのまま写真に収めさせて頂いた。
クリーニング施工後、出荷を待つレザージャケット達。顧客の声から生まれたサービスは顧客の手に届き満足をしてもらうことで、はじめて完了となる。もちろん定期的にクリーニングを行うリピーターとは長い付き合いになるだろう。
工場の立ち上がりから現在までの16年で依頼点数は3万点以上に至り、その中には複雑なものや難しいものなども度々あったと聞く。学生時代に美術室で感じた精閑な雰囲気とでも言うのだろうか、工場内に満たされたその雰囲気に積み重なった時間を感じた。