Pattern making 3
良いウェアーと呼ばれる基準については様々な角度がありますが、
その中でも重要な項目の一つに“パターン”
という尺度は欠かすことができないでしょう。
ライディングウェアーにおいても
優れたパターンは動き易く、重要な機能になってきます。
動きやすい服を作るには、表面積が大きいほうが有利ですが、
シルエットやデザインを崩さないよう
パターンを変形させていくテクニックが用いられています。
ジャケットの場合、袖の動かしやすさや肩周りは着やすいと感じるポイントになるので
今回は袖の動きに関わる肩関節について掘り下げてみたいと思います。
ハンドルに手を置くという動きは主に体幹に対して上腕を屈曲(前に出す)
やや外転(腕を外に広げる)します。
上腕骨と肩関節を形成しているのは肩甲骨です。
肩甲骨は鎖骨と肩鎖関節をつくり、背骨に沿って複雑な動きをします。
上腕骨をゆっくりと屈曲(前に出す)させていくと、30度くらいまで肩甲骨は動きませんが、
そこからさらに上腕を屈曲させていくと肩甲骨が回旋を始めます。
これは上腕骨の外転(腕を横に広げる)の動きに対しても同じように肩甲骨が回旋をします。
第三者の肩甲骨を触診し、動かしてもらうと理解頂けるかと思います。
上腕の動きに対して肩甲骨が動いているので肩関節そのものが肩の動きを補いながら動きます。
この肩甲骨の動きには法則があります。
上腕の動く角度に対して肩甲骨の回旋角の割合はちょうど 2対1
例えば上腕を90度屈曲させると、上腕骨の屈曲角は60度、
残りの30度は肩甲骨が回旋しています。
肩関節と肩甲骨の両方によって運動がなされることから
上腕肩甲リズムと呼ばれています。
ウェアーのパターンにおいて狭い背幅や袖山のユトリ不足は
肩甲骨の動きを妨げることとなり、
”動きづらいウェアー”として表面化します。
タイトフィットになるほど、
どの部分にどれだけのユトリを付けるかがシビアになってきます。
まず着やすいこと、 動き易いことは、
ロングランによる疲労軽減やいざという時のリスク回避などに繋がる重要な機能です。
良いライディングジャケットを選ぶ目安にして頂けたら幸いです。
【牛坂】