羅紗切り鋏(裁ち鋏)
社長から戴いた七つ道具の一つ。裁ち鋏。
主に生地の裁断などに使う大型の鋏です。
刃と柄の中間にネジ(支点)のあるX字型で最も一般的で応用範囲の広い系統。
「羅紗切り鋏」とも呼ばれています。羅紗の語源はポルトガル語のRAXAを音訳したもの。
羅も紗も薄手の絹織物という意味ですが、厚手の生地の裁断も十分に可能です。
造語でしょうか?それとも切れ味が良すぎるのか・・?
刃を半開きに固定し、生地を引掛けて裂くように切ることができます。
元は明治開国前後の舶来ものと云われていますが、以来、日本人の小さな手になじむように
改良されてきました。また、製法も異なります。
欧米の刃物のほとんどが一体の鋼で作られているのに対し、日本の刃物は軟らかい鉄と
硬い鋼(刃の部分)を組み合わせ、微妙な調子を取る事ができます。
これは平安朝以来の日本刀に見られる優れた鍛造法の継承。
この製法により、鋭い切れ味と繊細な感触が生まれます。
2枚の刃を動かす呼吸のような感覚を呑み込まなければ、思いのままに鋏を
使いこなす事はできません。
その感覚を習得し、工場では職人が各自で革や生地の裁断を行っています。
方法はさまざまで、包丁やカッターを使う人もいれば、鋏を使う人の中でも
切る素材によって使い分けるために数本所有する人も。
また、右きき用・右刃や左手用・右刃など型もそれぞれ異なります。
本来ならば裁ち鋏は布以外の物は切らないところですがカドヤでは
革の裁断にも使用します。
このスタイルはテーラーにいた職人が、革ジャン屋へステージを変え
独自の手法と道具を取り入れた事により生まれました。
刃の手入れは研ぎ屋に出す人もいますが、ほとんどの人が自分で研ぎます。
これは作業効率を高めるためでもあります。
一般的な形式とは少し異なりますが、本人にとって使い慣れた道具での
作業は効率が良く、何よりも良いものを作ろうとする姿勢とクオリティーに
変わりはありません。
中でも秀逸なのがテーラーで経験を積んだベテラン職人のワザ。
迅速で正確な裁断。縦横無尽。
まさにシザーハンズ。
【中村】