HAPPY ENCOUNTER
今年もなかなか暑い日が続いております。
こんな時期は近所に出かける際 きまって「雪駄」を履いているのですが
その雪駄がいよいよ寿命を迎えました。
ここ浅草に本社を構えるカドヤの周りには 履き物屋が幾つかあるので
手頃な物でも探そうかと思っていたのですが
家の近くで買い物をしている時に 古い呉服店を発見。
「ここにも手頃な雪駄がありそうだな」とシャッターが半開状態のこぢんまりとした店内を覗くと
椅子にチョコンと座った 店主であろう老人が一人。
思ったとおり手頃な雪駄は置いてましたが、足のサイズが大きい私に合う物は無さそうです。
「そのサイズはあまりないんだよねぇ」 「ですよねぇ・・・」 のやり取りの後
「1足あるんだけど履いてみる?」と足が悪くあまり動けないと言っていた店主が
ゆっくりと立ち上がりました。
どうやら1週間前に連絡しても取りに来ないお客さんの取り置き分みたいです。
実際に物を見ると 見た目も履き心地も抜群。一目惚れ状態であった私は
「これはイイですね! でもお客さんの取り置きですよねぇ・・?」 と言うと
「イイよ!連絡しても来ないし、内金ももらってないしさぁ・・」 となかなかの不良老人(笑)
「そうですか(ヤッタ!) じゃあ これ貰います」 とは言ったものの それほど手頃な価格では
なかったので持ち合わせがなく、必ず戻りますと言い残し ATMへ直行。
店内に戻り 「本当は底も革張りの物が欲しい」 と伝えると
「あるけど高いよ」 と店の奥から出してもらった雪駄は実に見事で
鼻緒の部分には亀の革が使われており、今日ではワシントン条約でアウトな代物・・・
お値段は9万円也!!!失礼致しました・・・
こんな高価な物を買う人がいるのですか?と聞いてみると 年に1足は売れるそうです。
雪駄に10万円弱!? と驚愕していたところ 大好物の手拭いを発見。
しかも私の好きな「亀」の柄があります。
「亀、珍しいでしょ?」 「はい♥」 追い打ちをかけるように「たしか ドクロもあるよ」と店主
「ド・・ドクロも好きです♥」 と言うと積み上げられた在庫の箱から出してくれたのですが
残念ながら私の好きなドクロではなく・・・可愛らしいドクロも嫌いではないですが
ちょっとファンシーすぎます・・・
そんな中、店主は在庫の中に「亀」の柄がない事に気づいたようで
「そぉか・・最後の1枚だったか・・そぉかぁ・・」 と寂しげな様子。
1枚400円と破格な手拭いにしても 取り扱っている一つ一つの製品に思い入れが
あるのを感じますし、店主が自ら生地を裁っているとの事。
そうなるとファンシーだろうと構いません 「亀とドクロ。あっ、これも下さい」
イイ買い物をしちゃったなぁと思い 帰り際に一礼すると「大事に使ってください」と店主
染みる言葉です。
それにしても近所の商店街に醤油を買いにきた筈が 何故この衝動買いに???
実は私は元々そういう傾向があり、Tシャツを買いにきたつもりがブーツを買って帰るなんて事もしばしば・・
意外とこんな経験をしている人がいるのでは? いないのかな・・・?
これは魅力的な物との思わぬ出会いが原因ですが、それ以外に人の力も大きいと感じます。
「この人には負けた」 「他で安く売っている店があっても この人がいるこの店で買いたい」 など
買い物をする上で私にとっては重要なポイントです。
今回の呉服店はまさに完敗。 いまだに思わぬ人と物の出会いに翻弄されております・・・
ちなみにカドヤの販売スタッフも要注意です。
残念ながら私は東京本店でしか買い物をした事がないのですが、本当に気持ちの良いスタッフばかり。
なので なるべく近づかないようにしているのですが、先日もまた1つ購入・・・
出会いなので仕方ない・・・ですかね?
【中村】