文章: 90周年記念モデルのメッシュジャケットは常識外です
90周年記念モデルのメッシュジャケットは常識外です

確かな審美眼を持つバイクライター・アイキョウ氏が、KADOYAの主要プロダクトを実際に着用し、その設計思想から実用性までを深く掘り下げる本シリーズ。
今回ご紹介するのは、人気のメッシュジャケット「MARKSMAN」と「THOMPSON」の90周年記念モデル。モーターサイクルを知り尽くしたアイキョウ氏ならではの緻密なインプレッションを通じて、KADOYAが追求するクオリティの深層へ迫ります。
文・写真/相京雅行
編集/KADOYA MAGAZINE編集チーム
どうも、アイキョウです。
少し前にカドヤのパンチングレザージャケットをご紹介しましたが、生地の防御力が高いため、ウインドブレーカーなどを中に着れば肌寒い時期にも活用できます。
メッシュジャケットもウインドブレーカーとの組み合わせで長く使えますが、軽量なため、7月から9月末頃の夏本番に「防御力を多少落としてでも、とにかく快適に走りたい」という人に最適です。
2026年に90周年を迎えるカドヤからは、2つの記念モデルがリリースされました。
MARKSMAN-XC

商品名:MARKSMAN-XC
カラー:ブラック、グレー
価格:3万3000円
サイズ:S~4L
プロテクターポケットは肩・肘・背中に備わっており、脊椎プロテクターのみ標準装備されています。
脊椎プロテクターは一般的なエアスルータイプですが、厚みがありクッション性に優れています。
ここ数年のカドヤの定番モデル「マークスマン」の90周年アニバーサリーモデルで、大きな特徴は2つあります。

1つ目は生地の質感です。
一般的なバイク用メッシュジャケットはポリエステル100%ですが、MARKSMAN-XCも同様です。通常、ポリエステル100%のメッシュ生地には独特の光沢感がありますが、本モデルはマットな質感でジャージのような風合いです。そのため、バイクを降りた後もバイク用ジャケット特有の違和感が少なく、観光地などでも目立ちません。

2つ目は伸縮性です。
本来ポリエステルに伸縮性はありません。そのため、一般的にはポリウレタンなどを混紡してストレッチ性を持たせますが、本モデルはポリエステルへの特殊加工や糸の工夫により伸縮性を実現しています。とはいえ、ポリウレタン混紡生地ほどのストレッチ性はないため、装着するプロテクターの厚みを考慮してサイズを選ぶのが良いでしょう。
デザインは、カドヤのダブルライダースをそのままメッシュに切り替えたような形状です。

メインファスナーの裏には大型の「タテ」がついていますが、こちらもメッシュ生地なので、ファスナー部からの走行風を遮りません。

ファスナーを少し開けて襟をボタンで固定できるダブルならではのシルエットは、蒸れやすい胸元に風を取り込めるため機能的です。

随所にアクセントとしてレザーが配されています。夏用ジャケットは頻繁な洗濯が想定されますが、以前同ブランドのレザーアクセント付きメッシュを3シーズン使用した際も、特別な手入れなしで革の劣化は見られませんでした。

裾や肘などの部分使いは質感を高めていますが、肘部は転倒時の接地を考えると、もう少し横幅が欲しいところです。しかし、パンチングレザーを採用して通気性を確保している点は素晴らしい配慮です。

ポケットは両脇と内側の計3か所。いずれも大型スマートフォンを収納可能ですが、ライディング時は内ポケットに入れると邪魔になりません。

両脇のポケットには金属製の引き手が付き、武骨な印象を強めています。

胸には同色の90周年記念ワッペンが配され、主張を抑えつつも上質感を演出。

背中にもワッペンとプリントが施され、所有欲を満たしてくれます。

裾裏にはシリアルナンバーと、名前・血液型を記入できるラベルがあります。血液型の記入は万が一の際に役立つかもしれません。

袖口にはファスナーがあり、広げることで風の取り込み量を調整できます。

一点注意が必要なのは、重厚なダブル仕様のメインファスナーに「ファスナー隠し」がついていない点です。街着としてのデザインを優先した結果と思われますが、前傾姿勢のバイクではタンクを傷つける可能性があるため、タンクパッドの使用をおすすめします。
THOMPSON-XC

商品名:THOMPSON-XC
カラー:ブラック、グレー
価格:3万3000円
サイズ:S~4L
プロテクターの仕様はMARKSMAN-XCと同様ですが、こちらには胸部プロテクター用のボタン・マジックテープが備わっています。

MARKSMAN-XCがダブルなら、THOMPSON-XCはシングルライダースをメッシュ化した形です。基本特性は共通ですが、ダブルが少しワイルドな印象なのに対し、シングルはシンプルでシックな仕上がりです。

その象徴がポケットの引き手がない点です。MARKSMAN-XCの武骨さに対し、こちらは非常にスッキリとした印象を与えます。

当て革は裾のほか、肩から袖にかけて2本のラインが追加されています。ブラックには赤とネイビー、グレーにはホワイトと落ち着いたネイビーが採用されており、より洗練された印象です。

内ポケットは胸部プロテクター装着への干渉を防ぐため、低い位置に変更されています。

メインファスナーは端を折り返して隠す構造になっており、ファスナーの主張が控えめで、車体も傷つけにくい仕様です。

袖口のファスナーはマチがなく、開くと大きく分割される構造で、MARKSMAN-XCよりも走行風を取り込みやすくなっています。
サイズ感

身長164cm、体重62kgの昭和体型の私がMサイズを着用したところ、全体的にタイトな作りのため、普段のSサイズよりMサイズがジャストでした。標準の脊椎プロテクターのみの状態ではゆとりがあり、全身にプロテクターを追加しても問題なさそうです。生地にストレッチ性があるため、タイトに着ても動きにくさは感じません。

実走インプレッション(気温29度、晴天)

走行してみると、一見メッシュに見えない外観ながら風抜けは非常に良く、快適でした。インナーには吸湿速乾素材を着用していましたが、30度を超える場合は接触冷感インナーを合わせるとさらに快適でしょう。
MARKSMAN-XCの袖口は、ナックルガード付きの車両だったこともあり劇的な変化は感じませんでしたが、胸元を開けるとベンチレーション効果で一気に涼しくなりました。

THOMPSON-XCも同様に風抜けは抜群です。ブラックは日光を吸収しますが、通気性が高いため熱がこもる感覚はありません。袖口が全開になる構造のおかげで、MARKSMAN-XCよりも走行風の流入を顕著に感じられました。
どちらを選ぶべきか

機能面で大きな差はありませんが、胸部プロテクターの拡張性や袖口の構造に違いがあります。
私個人の好みで言えば、MARKSMAN-XCのグレー一択です。ダブルのシルエットとグレーの絶妙な色味が非常に格好良いからです。
メッシュジャケットを毎年買い替える人は少ないと思いますが、この90周年記念モデルが手に入るのはおそらく今シーズンだけ。買い替えを検討していた方は、この機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。















