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記事: 「思い出のライダースジャケット」

「思い出のライダースジャケット」

「思い出のライダースジャケット」

あらためまして
新年 明けまして おめでとうございます

今年最初のHFブログは わたくし 原田 の「思い出のライダースジャケット」の話から
スタートさせて頂きます。

20歳の頃 古着屋で購入し、それから22年の月日を共にしてきた 「とっておきの一着」

レザージャケットの専門メーカーカドヤ

31歳でカドヤに入社。
革ジャン職人として工場に勤務し、ライダースウェアの構造を追及するようになって
からは、このJKTに袖を通すことが殆ど無くなりましたが、それまで所有していた
10着程の革ジャンを全て手放した現在も、思い出の沢山詰まったこのJKT一着だけは
部屋の守り主として、玄関の壁に飾ってあります。

18歳で乗り始めたオートバイ。
何がオートバイ用として適し、優れ、安全で着易く、カッコいいライダースジャケット
なのか、、、そんなことは何も考えておらず、ただ漠然と「革ジャン着とくベシ!」と
ごくごく浅い付き合いをしていた頃、ある古着屋で運命の出会いがありました。

その頃 習慣となっていたライダースJKT見学を古着屋さんで黙々としていると、
「何か 探してるモノがあれば!」 
と縦長で狭い店内奥から「ピターっ」としたライダースJKTを着た
不良濃度の高い パンチの効いた おニイさん が声をかけてくれました。

僕      「ぴたっ、 とした革ジャンで、、、」
店員さん  「ハイハイ、、タイトなライダースね。」
僕      「た?、、、たいとで!」

店員さんがシャバダっている僕に失笑し、ハンガーラックに掛けられた おびただしい数の
革ジャンの中から、瞬時に、一発で目の前に出してきてくれたのが このJKT。

その頃は、(経年変化の良さ )とか(アジ )とかにあまり興味がなく、
古着の中でも劣化の少ない程度の良い物を無意識に見て探していたので、、、
まず 出されたJKTの ボロイというか、ヤレ具合に驚きました。

そして、それにもまして どうも気になって仕方なかったのが、
両袖口からほぼ左右均等にはみ出ている赤い布。

僕が納得出来ずに「ジーッ」と袖口の赤いヤツをモミ、クチャと触りながら睨んでいると

店員さん  「そうなんスよね、、裏地のキルティングが飛び出ちゃってて、、、
         カッコ良いっスよね!そういうところが。」
僕      「(こういうの、、かっこ良いかよ。)」 無言。
店員さん  「お客さんの体型だと 飛び出た裏地分も含めた袖丈で ジャスト でしょうね。」

完全に店員さんのペースとなり 鏡の前に誘導され、オメオメと試着。

はたして 鏡に写った自分の姿は、店員さんの言うとおり
全くもってして、飛び出た裏地も含め 袖丈はジャストサイズでした。
ボディー全体のシルエットも体にフィットし、革も柔らかく動きやすくて
ヤレて アジがでている分、鏡の中の自分が実年齢よりも少し貫禄が出た気がして、
まんざらでもなく、内心、嬉しくなりました。

僕      「どうなんですかね。」
店員さん  「大丈夫、OK!!」  と笑顔。
僕      「買います!」     と満面の笑顔で返す。
店員さん  「あざース。。」    と 今度は ものすごく業務的に イナされ。。。



忘れることの出来ない、大切な思い出の1ページです。

この1着の古びた革ジャンとの出会いによって、私に遅咲きの青春黄金時代が到来し
20代は、オートバイと革ジャンが [精神軸] となって活発化し
いろんな人、物、場所との出会いによって 大いに刺激を受け、影響され、興奮し、
本当に大好きになって、のめり込んでいく中で、
「自身の輪郭」 が形成された時期でした。


そして、22年後の現在

レザージャケットの専門メーカーカドヤ

現在の私の職務は 縫製職の他に、
革の仕入れから出荷前の製品検品など 管理業務全般、
時には、新商品の開発に携わることもあります。

上の写真は
次期 HFニューモデルに使用予定である新規の革を、 HF既存モデルに落とし込んで
モニタリング中の サンプルJKT。  実験も最終段階にきています。

タンナーさんや、皮革技術センターで検査してもらう多角的な革の堅牢度データーとは別に、
艶の感じ、シワの入り方、ハリとコシがしっかりと備わっているか、着易いか、馴染みは
どうだ?、、、、などなど、
モニタリングは 、取り扱う我々自身が体感し、様々なプロセスを踏んで、
理解し、納得したうえで理論付けを行う とても重要な業務です。

創業75年を超えた 「カドヤの伝統技術と精神」 に裏打ちされた
ライディングウェアづくり の哲学、方法論により、
「 高い完成度を追い求める 使命感 」 をスタッフ皆が 共通認識として強く念頭におき、

お客様に 「 安心して 喜んで頂ける 革ジャン づくり」 に日々、励んでいます。


一着の革ジャンが完成するまでの間に
こんなにも根気と集中力のいる 地道な作業が必要である、、、ということなど

22年前の僕 は全く 知る由もなく。。。


「大丈夫、OK!!」

不良にいさんの (あの言葉) に後押しされ、、
ライダースJKTを着る喜びに満ちた日々を送っていたのです。

レザージャケットの専門メーカーカドヤ

(19年前)  手に入れたばかりのトラ と あの革ジャン




【原田】