MERIDEN
こんにちは、原田です。
今回は
HFラインナップモデル
メリデンシリーズ について、お話したいと思います。
〔 MERIDEN 〕
メリデンとは、英国ウェストミッドランドにある小さな村で
かつてのオールドトライアンフの工場があった地名です。
第二次世界大戦の戦中、戦後
設計士のエドワードターナーが在籍していた時代に
現在までのモーターサイクル史に残る数々の名車を生み出したのが
TRIUMPH MERIDEN FACTORY です。
ターナーは開発と経営を兼任し
彼が生み出した中でも傑作と言われているのが
1938年型の SPEED TWIN です。
既存のOHV単気筒と同じボア、ストロークで2気筒化し
500ccの排気量でバーチカルツインとなったエンジンは
最高出力28.5psで最高速度150km/hをマークし
業界とユーザーへ大きなインパクトを与えることとなりました。
1939年、第二次世界大戦が勃発。
イギリス軍はトライアンフに軍用機納入要請を行い
すでに生産されていた車両は全て軍へ回され
民間用のモーターサイクルは生産中止となります。
トライアンンフを含め軍需兵器の一大生産地となっていたコベントリーは
1940年11月、ドイツ軍の空襲を受け、工場は爆撃により壊滅状態となります。
政府の資金援助により近隣のウォリックに設けられた仮工場で生産は再開されましたが
以前のような生産効率が上がらず、コベントリーに工場を再建しても再び爆撃の目標と
されることを懸念し、政府容認は下りませんでした。
新たな生産拠点として建設地が定められ、進められたのが
メリデン工場です。
生産が再開された1942年3月から終戦を迎えた1945年8月までにトライアンフは
約5万台もの軍用車を生産したそうです。
戦後は通常の生産状態に戻り
戦前モデルのスピードツインやタイガー100などの生産を再開します。
1946年には歴史ある国別のトライアル大会〔ISDT〕にスピードツインで出場した
イギリスチームが優勝したことで、初のオフロードモデルであり
トロフィーのニックネームが付いた TR5 が開発されました。
その後ターナーは、より良いモーターサイクル事業の発展を目指し
スポーツとしてモーターサイクルに乗ることが盛んな国で
世界最大のモーターサイクル市場であるアメリカへの進出を計ります。
アメリカでは当時、ハーレーダビッドソンやインディアンなど1000ccを超える大排気量の
Vツインエンジンが主流で、アメリカ市場での勝負は大排気量のエンジンであることが
必須であったことから、1949年、2気筒500ccだったスピードツインのエンジンを650ccに拡大し
テレスコピックフォークとナセルヘッドライトが特徴で、軽量スタイリッシュで高速マシンである
6T サンダーバード を開発します。
サンダーバードはアメリカ市場で好調な売れ行きとなり
戦後のトライアンフの大きな一歩として、ターナーが生み出した傑作マシンの一つとなります。
1959年、トライアンフ史上最も成功したフラッグシップモデル
T120ボンネビル(通称ボニー) が登場します。
最高速度記録挑戦が行われる ボンネビル ソルト フラッツ に因んで命名されたモデルは
アルミシリンダーヘッドにツインキャブレターをセットしハイカム仕様でレーシーな市販車となりました。
1962年に最高速度記録にチャレンジし、361km/hを達成しています。
エドワードターナーがトライアンフ在籍中に生み出した最後のモデルとなります。
戦後1950年以降、日本製の高性能マシンが世界に台頭し始める1960年代中ごろまでが
メリデントライアンフの黄金期であり、ターナーにより スピードツイン、トロフィー、ボニー
タイガー、サンダーバードなど、数多くの名車が生み出されました。
写真は、愛機1950年式 6T サンダーバードです。
20年前の24歳の時、1台目の憧れのトライアンフ 1969年式TR6R を手に入れ
カドヤ入社4年目の35歳で、ヴィンテージバイクレースに参戦することがきっかけで
サンダーバードを手に入れました。
いつもお世話になっているオールドトライアンフのチューニングショップ
TRIDE MOTORCYCLES の社長 大石さんに無理を押してお願いをし、希少車で探しても
中々出てこない状況下で1年程探してもらい、やっとのことで見つけて頂いたものです。
見つかった次の日の朝、大石さんから連絡が入りました。
「スゲーいいの見つかりました! 今から取りに行ってきます!!」
「どこにですか?」
「カリフォルニアです、今飛行場です~!」
「エ、、、見つかった、サンダーバード、、取りに行く、、、今から、、、か、カリフォルニアアア。。
オオイシサンガアアア。。。。。。」
その時私は出張のため、秋田へ向かう新幹線の車中でしたが
あまりの突然すぎる嬉しい知らせで
窓から見える物凄いスピードで流れ去る景色に目が完全に泳がされ
一瞬仕事モードが完全に破壊されたことを今でもはっきりと覚えています。。。
納車してからレーシングチューンをしてもらうまでの間
しばらく現状のノーマルで乗る経験をしましたが
いざレース参戦に向けて仕上げて頂いたサンダーバードは
大石さんの気合いの宿った別もののマシンとなり、、、
エンジンの基本構造が後年式と共通部分が多いことから
ボニーのハイカムをセットし細部の内燃機加工が施され
シングルキャブ仕様のヘッドに希少なツインキャブ用のマニホールドをセットし
バルブ加工、強化スプリングで吸排気効率が向上し、、、
凶暴化したサンダーバードは
レース場で想像以上のタフでアグレッシブな走りをしてくれました。
とにかくレース場で全開領域で走り回ることが楽しくて楽しくて、、、
気付けば4~5年の間にかなり車体を酷使してしまい
現在我がサンダーバードはレースを引退させ街乗り用として日々通勤で活躍してくれています。
低、中速域の唸るようなエンジンの振動が高回転域でピタッと治まり
物凄くスムーズに回りだして加速するレース場での体感は
公道で中々味わうことは出来ないですが
ゆっくりと楽に鉄エンジンのトルクを感じながら楽しむこともできて
本当に大好きなバイクです。
イギリスはメリデン生まれ、アメリカはカリフォルニア育ち
御年65歳の我がサンダーバードは
様々な国の様々な人に愛され守られ、現在は日本在住で
生みの親であるターナーや
育ての親である前オーナーが知り得ぬ
現役バリバリな活躍を見せつけてくれています。
1台目に手に入れたトライアンフ 1969年式TR6R
こちらもメリデン製です。
サンダーバードに代わってレース車両へと変貌しました。
エドワードターナーと共にレース場でスナップ写真。
私は様々なバイクを乗り継いできた経験がないので
諸先輩方のように 「 トライアンフが1番 」とは言えませんが
トラを乗り始めてからの20年間がそうであったように
これからも 「 トライアンフさえあれば 」
ハッピーにオートバイ人生を送れるに違いないと確信しており
大好きな革ジャンづくりに必要なエネルギーをいつも注入され
インスピレーションを沸き起こさせてくれます。
遡ること今から13年前
入社2年目に迎えたヘッドファクトリーブランドの立ち上げに
幸運にもブランドモデルを任せて頂き
アメリカンスタンダードモデルと同時に立ち上がったのが
〔 MERIDEN 〕 です。
トライアンフに乗り続けてきたことで湧き上がり、こみ上げてきた様々な思いを
トライアンフが輝いていた黄金期のイギリスの地メリデンに夢を馳せ
トライアンフの名車たちにインスパイアされて生まれた
メリデンシリーズラインナップのライダースジャケットに
今年の冬、ブランドタグも新たに
ニューモデルが加わります。
【 原田 】