HF-DEER 2
[Fujioka Deer] Leather
[ Natural Art ]
自然の中の色彩や風情を巧みに取り入れ、古都 奈良の美しい四季の中で生まれ
育った伝統、培われた匠の技を天然素材である「鹿革」の鞣し一筋に拘り生業と
する [藤岡勇吉本店]
明治17年創業、以来128年目を迎える同社は、代々培われてきた鞣しの
伝統技法を重んじながら、一方で化学的な技術の開拓やデータの蓄積、環境問題
に配慮した鞣しの開発など、常に先見の明を持った研究を行っている。
鞣しは地形や気候、自然のめぐみ、風土的な要素が重要である。
中でも[水] 「藤岡の鹿革」には、地元に流れる[菟田野の水]が必要不可欠となる。
また、鞣し太鼓内の保温性と木材の耐久性に配慮し、アフリカ産のチーク材を
使用した本場のスペイン製ドラムに拘る。
鹿革の優れた特性である「しなやかさ」「丈夫さ」「やわらかな風合い」は
枚挙にいとまがないほどの細部に渡る気配りと、鞣しの確かな技術があってこそ
実現する。
[ 奈良 藤岡本社工場見学 ]
去る2011年2月、この度のHF-DEERニューモデルの生産に先駆け、
鹿革初回発注分の生産時期に合わせ、奈良県の藤岡本社工場を見学させて頂きました。
我々の急な要望、納期に対応して頂き、見学会当日は初回発注分が完成し、出荷待ちの
状態であったため、生産工程は見られなかったものの、
朝から夕方まで一日中、藤岡社長と山本工場長が我々につきっきりで説明をして
下さいました。
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1) 染色太鼓から染め上がりの革を取り出す作業
2) フレッシング-肉片などの不純物の残っているピックル皮を機械に入れて
除去する作業
3)4) 工場内中央に鎮座する風格漂うスペイン製ドラム
5) ピックル戻し、脱脂、脱皮、漂白を行う
6) クローム、植物タンニンなど、目的別に鞣しを行う
7) 特種の革漉き機、スカイバーリングという巨大なチェーンソーのような
刃がローリングし、目的用途に応じた厚みに漉いていく
8) 鞣しの技術によって鹿革の優れた特性にさらに柔軟性と強度が加わり、
高精度スカイバーリングマシンの漉き加工によって最薄 0.3mmにまでなるという
9) 鞣しの基本工程を終えた各種用途別のクラスト革を前に、
山本工場長から説明を頂く
10) 今回我々が発注をかけた細かい内容の革のセレクトが、いかに困難な
作業かを、藤岡社長が大量のクラスト革を前に説明して下さいました
11) 用途別に仕分けされ、染色工程待ちの各種クラスト革
12)13) 〈焼き刷り〉高級な武具などに用いられる革。 古くから伝わる
伝統的な表面処理技法、二人が向き合い呼吸の合った無駄のない動作で
すばやく丁寧に作業は進められた
工場内は革の焼けた香ばしい良い匂いが充満していた
今回の見学は我々スタッフの鹿革に対する見識をより深める目的と同時に、
カドヤプロダクツ HFクオリティーの理念、方向性を具体的にお伝えし、ご理解して頂く
ことにありました。
型紙レイアウトの都合上、ロスをなるべく出さないよう、判の大きさや、傷の入り具合
も含めた良質な革のセレクトを、藤岡社長みずから現場に入り作業をして下さいました。
隅々まで整理整頓がなされ統制のとれた生産現場、まわりのスタッフに対し個々が気配り
協調性をもって仕事に打ち込む姿勢を目の当たりにし、
厳格な「ものづくりの信念」を強く感じました。
我々カドヤスタッフも今まで以上に更なる「ものづくり」に対する決意、結束を固める
意義深い旅となりました。
最後に
藤岡社長をはじめ、今回の見学会にご協力頂きました工場スタッフの皆様、
この場をおかりし、深く御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
【原田】