糸
ヘッドファクトリー製品に使用されている縫製糸、糸の種類は大きく分けて2種類です。
糸の色や太さを含めると、もっと沢山のバリエーションになるのですが、糸そのものの種類は2種類。
主に使われるひとつめは、ポリエステル製のミシン糸です。
昔まだ、化繊のミシン糸が流通していなかった頃は、麻や綿などの天然素材糸が主流でした。
もちろん今でも一般的に天然糸は、化繊には出せない風合いがいかされて、様々な場面で活躍しています。
しかし、強度面で比較すると、ポリエステルやナイロンの化繊糸に軍配が上がります。
更に強度に拘れば、防弾ベストなどに用いられるケブラーやザイロンで作られた糸も存在するのですが、革との強度バランスで選ぶとなれば、ポリエステル糸が丁度いい素材といえます。
そして、もう一種類は「コア」と呼ばれるミシン糸です。
これはちょっと面白い糸で、一見すると綿糸なのですが、綿の中心に細いポリエステル糸が通っている構造をしています。
綿糸の風合いとポリエステル糸の強度、ふたつの個性を融合させた優れもので、ヘッドファクトリーではジャケットのデザイン性や革の種類により、この糸を採用しています。
ただ、強度や発色の良さ、糸の光沢感などを優先させる時にはポリエステル100%を選択しますし、やはりこちらがメインです。
先日、レザークラフトを生業とする友人と赤提灯で飲んでいるときに、糸の話になりました。
彼は蝋引きの綿糸か、たまに人工シニュー糸を使っているのですが、話が強度にさしかかると突然 「強度優先で考えるのならクモの糸でしょ!」 と叫び出しました。
クモの糸が強いと言うことは知っていましたが、彼曰く、「ケブラーよりも強いぜ」 だそうです。
その日は飲んでいたこともあり、冗談話として軽く流したのですが、後日思い出して調べてみると、面白い発見がありました。
同じ太さで比べたとき、クモの糸がケブラーよりも数倍強いという結果は科学的にちゃんと証明されていて、10年ほど前に発見されたダーウィンズバークスパイダーという当時の新種が出す糸は特別に強靱、その強さはケブラー糸の10倍を上回るそうです。
仮に、この蜘蛛の糸を鉛筆の芯くらいの太さに束ねたもので巨大な網を作ったとしたら、墜落する飛行機を受け止めるだけの強度が備わるというのです。
マジか、、、
更におどろいたのは、既に人工クモの糸は開発完成されていて、「クモノス」と名付けられたその繊維は、一部の製造分野では採用されはじめているらしい。
まだミシン糸としては出回っていないものの、もしかしたら近い将来、人工とはいえクモの糸で革ジャンを作る日が来るのかもしれません。
いや、多分それは無いな、あくまでも主役は革であり、革にダメージを与えるほど強くてはいけませんので。
【市島】