DEER SKIN
いつもお世話になっている、鹿革専門のタンナーさん「藤岡勇吉本店」
藤岡さんの歴史は古く、創業130年を超える老舗中の老舗で「鹿革と言えば藤岡」と言われるほどのシェアを誇ります。
この日は、鹿革を取り巻く今までやこれから、その他諸々のお話を伺う為、何年かぶりにご挨拶を兼ねて足を運びました。
向かった先は、実際に革を鞣している奈良の工場では無く、東京自由が丘のアンテナショップ。
美しく鞣された鹿革の数々が吊るし展示されています。
原皮は同じでも、鞣し工程と表面処理の違いによって仕上がりは様々。
今のところ、ヘッドファクトリーでディアスキンを用いた新展開の予定は御座いませんが、やはり良い素材を目前にすると気持ちが高ぶり魅入ってしまいます。
世の中には多種多様の革素材があり、その中でも特に鹿革は個性的で、しなやかな弾力性と引裂強度のバランスは一歩抜きに出ています。
戦時中には航空機の燃料フィルターとしても使われていたほど通気性に優れている点や、絹のような表面の優しいタッチ感などなど、それらを総評して革のカシミアと形容されます。
因みに、カシミアは「繊維の宝石」と表現されるので、ではディアスキンは革の宝石とも言えるのかと思いきや、革の宝石と形容されるのは馬革のコードバン部分だそうです。 ややこしいですね。
鹿革の、と言うより鹿の生態による特徴がもう一つ、表面キズの多さです。
レザーウェアを作るとき、これを全て避けることは非常に困難な為、ヘッドファクトリーでは素材の素の風合いや、繊維密度や厚みなどを重要視し、表面的な細かいキズや染みなどを無理に避ける裁断の仕方はしていません。
その為、製品のどこかには、キズや染みが入り込んでいる事が少なくないのですが、これも鹿革の特徴とご理解頂けますと幸いです。
革の表面処理は大きく分けると、顔料仕上げと染料仕上げのふたつです。
それぞれに善し悪しがあり、現在ヘッドファクトリーでは染料仕上げのディアスキンを採用しています。
藤岡タンナーが仕上げる上質な素材感をそのままお届けしたいからに他なりません。
そのような特性を持つ鹿革で作られたジャケットは、気負わず羽織れるやさしい仕上がりです。
是非、独特な鹿革のタッチ感をお確かめください。
【市島】