記事: 1930年代 - 創立と海を超えた奇跡
1930年代 - 創立と海を超えた奇跡
革の街・浅草
日本で最も歴史のある革ジャンメーカーであるカドヤ。その挑戦と革新の企業精神は創業から90年もの間、揺らぐことはなかった。カドヤは創業から浅草に根をはり営業を続けてきた。
その本場・浅草にカドヤが創業したのは、第二次世界大戦がはじまる6年前の1935年。
創業当初の店名は「カドヤ皮服店」。いわゆる洋服屋である。職人の町である浅草には、当時から同じような洋服屋がたくさん営業していた。
東京・浅草は古くから革問屋が多く、皮革製品も盛んに作られていた。そんな競争の激しい浅草で、何故カドヤが国内はもちろん海外でも知られるメーカーになったのか。
創業者・深野正次郎
創業当初から、カドヤは革製品の修理と染め替えも行っていた。当時、革は貴重な素材で、自社の製品を作るかたわら「この革で足袋や革ジャンを作ってくれ」、あるいは「この革ジャンを染め直してくれ」という要望に応えることも多かった。
現在でもオーダーメイドはカドヤにおける柱のひとつであるが、サイズ調整はもちろん、ユーザーの好みに合わせたカスタムを受け付けているのは、創業者の故・深野正次郎の、「革はお客さんの好みで作り変えるもの」という考えが、今でもしっかり息づいているからだ。
深野正次郎 1935 昭和10年
創業者/深野正次郎が東京浅草にてカドヤ皮服店開業。
皮革産業のメッカである浅草の地の利を生かし革製品の修理、染め替え、革の仕立て服などを手がける。「お客さんの要望に応えてこそ信頼が得られる」バイク好きの正次郎が作る革ジャンは評判になりやがて一家言持つライダーたち大勢集まるようになってゆく。
1930年代の奇跡
モーターサイクルジャケットの研究家・田中凛太郎氏によると、革ジャンの歴史は約100年。イギリスがその発祥の地とされているが、モーターサイクル用として初めて作られたのは1930年代のアメリカだったという。
それは、ちょうどカドヤの創立と同じ時期だった。
「オヤジもバイクが好きで、バイク用の革ジャンをよく作っていました。もともとは革の製品なら何でも作っていましたが、革ジャン作りの上手い店があると評判になり、ライダーが大勢来るようになりました」
(創業者の故・深野正次郎の長男で、現会長の深野正孝)
当時、革ジャンを作るにも作り方の教科書などあるわけもない。米軍払い下げの革ジャンの修理やサイズ直しの依頼も多く、正次郎はそこで欧米の革ジャン作りを学んだ。