HFのN-1

市島

KADOYA 本社工場スタッフ

2018.12.07

ここ数日、日本全国季節外れの暖かさに包まれていますが、週末から気温はどんどん下がっていく様ですね。

と言うことで、冬物のスタンダードモデル「N-1」の生い立ちを少し書こうと思います。

 

 

もともとのデザインソースは言うまでも無くミリタリージャケットの「N-1」デッキジャケットですが、各部仕様を変更し、ライダースジャケットとして再構築したモデルです。

本体革に使用されるのは山羊革、ヘッドファクトリーのオリジナルレシピで鞣される大判革で「HF-GOAT」と名付けられています。

N-1デッキジャケットに採用された素材「ジャングルクロス」をレザーに置き換えるとき、何革を、どう鞣し、どう仕上げるのか、先ずはここから決めることになったのですが、強度や着心地などの実用性は当然クリアしたうえで、第一に踏まえておきたかったのは、軍物の世界観から逸脱しない雰囲気を纏うこと、あたかも昔から存在していたかの様な自然な仕上がりを目指すこと。

そもそもなぜ革で作るのか、

それはKADOYAが革ジャン屋だから、と言ってしまえばそれまでなのですが、やはり革が持つ厚みの強度と防風性はライダースジャケットとして外せない機能的利点だからです。

さて、ではどの様な革を選択するか。

数多く存在するミリタリージャケットの中で、レザーが採用されている品番の代表格としてあげられるのは疑いようも無く「G-1」「A-2」「B-3」などでしょう。

ごく普通に街中で着ている人を見かけるほど市民権を得た名作と言え、あのヴィジュアル面での完成度は、見る側の脳裏に「当たり前の形」としてインプットされているレベルと思えます。

と言うことは、あれらに使われている素材の中からN-1のデザイン性にマッチする素材を選ぶ方が、脈絡も無く素材開拓をし、無闇に奇をてらうよりも理にかなっていて、ミリタリーの大枠で考えたとき収まりがいいはず、だとしたら「山羊」「馬」「羊」、、、 もうこれは山羊しかあり得ない、との結論に至りました。

素材としてのゴートスキンの特性がライダースに向いているとは常々感じていたことでもあり、タイミング良くここで方向性はがっちりと固まったのでした。

鞣しに関しては、クロム寄りのコンビ鞣しでセミアニリン仕上げの薄化粧フィニッシュと、大雑把なイメージは見えていましたので、それよりは先ず、継続的な大判革の仕入れルートを築くことがはじめの一歩となりました。

と言うのは、ご存じの様にゴートの名作「G-1」の本体を構成するパーツ、特に背中を構成するパーツ点数は多く、基本的に五つのパーツが組み合わされて背中を形成しています。 アクションプリーツの存在もこの内です。

対して、N-1デッキジャケットの背中は1枚の布でしかありません。 この寸胴でシンプルな見え方がN-1の大きな特徴であり魅力の一つと捉えています。

山羊革を採用することは決定したものの、この背中一面を縫い目無く仕上げられる大判革の仕入れ、既製品として生産ラインに乗せるからには、継続的かつ安定的に仕入れられなければなりません。 これがなかなかの難問で、それまでに山羊革を仕入れていた筋では実現出来ず、結局タンナーから探すしかありませんでした。

結果的に、あるタンナーとの出会いが仕入れ問題を解決させ、さらに棚牡丹的に幸運だったのは、このタンナーの社長さんと専務さんが無類のバイク好きで、ライダースジャケットに対する見識の深さと理解があったのです。

これは話が早い。

こちらが作ろうとしている物、それに対しての共感と、できる事と出来ない事、やはり同じバイク乗りだから伝わることは少なくありません。 イメージを共有できなければどうあがいても空回りするだけですから。

そうして紆余曲折ありながら、オリジナル素材「HF-GOAT」が完成しました。

 

素材開拓と平行するように、進められた各部ディテールの仕様決定。

ミリタリーファンから冷たい視線を浴びることになるだろう、などと想像しつつ、オリジナルからの思い切った仕様変更、あくまでもコンセプトはN-1の革版ではなく、HFのN-1でありライダースジャケット。

 

アルパカライニングはポリエステルツイルキルティングに置き換えられ、代わりにアクリル起毛の着脱式ベストを付属。

ハンドウォーマーの片玉縁は、両玉縁のZIP開閉式に変更、ZIPスライダーにはレザープル。

チンストラップはボタンホールからドットボタン式に変更。

前立て内側に風よけ持ち出しを追加。

1枚袖は2枚袖構成に。

フォルム自体は完全に見直され、袖付け角度はライディングフォーム寄りへ。

その他にも変更だらけですが、勿論全てに理由があります。

ただし、軍物の雰囲気とN-1デッキジャケットのデザイン性は最後まで大切に、生かしどころと壊しどころのバランスに細心の注意と敬意を払い構築しています。

 

 

リリースから早5年。

すっかり定番製品の仲間入りを果たした「N-1」

この冬も、1着でも多くのお客様へお届けできれば幸いです。