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記事: Repair&custom 20

Repair&custom 20

10年以上前に作らせて頂いたオリジナルデザインオーダーメイドジャケットの修理依頼が入りました。

内容は、ファスナーの全交換。

使えなくなるほどファスナーが破損しているわけでは無いので、修理と言うよりはデザイン的なカスタム内容ですね。

もともと使われているファスナーは「ビスロン」と呼ばれる種類で、エレメント(務歯)が樹脂製です。

ヘッドファクトリー既製モデルでは今のところ採用していない部材ですが、70年代後半に流行した、ビスロンとライダースの組み合わせは個人的に大好物です。

ちょっとここでファスナーの小話に脱線します。

ライダースを含む革製品全般には、金属エレメントのファスナーがよく使われていますが、このビスロンやコイルファスナーなども広い分野で活躍しています。

なんとなく金属ファスナーと比較して弱い印象の樹脂系ファスナー、実は全くそんなことはありません。

金属ファスナーの基本的な構造は、土台となるナイロンテープに金属のエレメントパーツがひとつひとつ噛みついている作りです。

対してビスロンは、同じくナイロンテープに樹脂エレメントが繊維に浸透して殆ど一体化しています。

金属ファスナーによく見られる破損の仕方で、ファスナーを正面から見た時、テープに対して直角に食いついていなければいけないエレメントが斜めに歪み、スライダーが通らなくなってしまう、といったケースがあります。

これは、噛みついている部分を支点として、外部からの力によりエレメントが回転してしまい、左右のエレメントがかみ合わなくなってしまう状態ですが、ビスロンのような射出成形型ですと、それが先ず起こらないのです。

大体ファスナーの破損はエレメントとテープの関係に何かしらの問題が生じたときか、後はテープ自体のやぶれが殆どです。

なので、テープとエレメントふたつの素材がバランス良く食いついていれば1つの課題はクリアです。

そういった意味でビスロンは強い。

もう一つの課題、テープ自体の破れについては、金属ファスナーもビスロンも同じくナイロンテープが使われていますので、双方使い方で気を使うほかありません。

ファスナーとしての素材間強度バランスでいうと、ビスロンが理想的ともいえますが、エレメント単体の強度だけで見たときにはやはり金属の方が強いので、一長一短ですね。

さて、修理です。

今回は、ビスロンファスナーを取り外し、インジェクションファスナー「MZF」を移植します。

またこの特殊ファスナーといえる「MZF」について書き出すと止まらなくなりますので割愛しますが、名前の通りビスロンと同じく射出成形ダイカストによって作られるファスナーで、しかもエレメントは亜鉛合金。

ある意味最強、そしてカッコイイ。 

ポケット、袖口、前中心、全てのファスナーを交換し、イメチェンを図ります。

もともとの「務歯出し」仕様ポケットを

「両玉縁務歯隠し」仕様にカスタマイズ。

完成です。

もともとの漆黒仕様も精悍で格好良かったですが、シルバーのラインがアクセントになりひと味違った印象に変身しました。

実はこのジャケット、数年前に衿をスタンドカラーからレギュラーカラーに変更していますので、これで2回目のマイナーチェンジです。

1着で3度の楽しみ、、、

カスタムって良いもんですね。